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波方海技短大OB座談会

波方海上技術短期大学を経て浜崎海運に新卒入社した船員2名と専務の座談会。
コロナ禍での就職活動、浜崎海運を選んだ理由、実際に働いて感じた正直な感想、
そして海技学校での学びがどう仕事に活かされているのか、これから社会へ出る後輩へ向けてのメッセージやアドバイスも聞いてみました。

参加メンバー

  • 横手 幹太
    2021年新卒入社 / 操機手
    神奈川県立海洋科学高等学校
    →波方海上技術短期大学校卒
  • 佐々木 勇輝
    2022年新卒入社 / 甲板員
    熊本県立天草拓心高等学校
    →波方海上技術短期大学校卒

進行役 浜崎 貴司 / 専務取締役

―まずは、浜崎海運に入社した経緯を教えてください。

僕は九州出身なので、就職活動時も地元九州の会社を探していて、たまたま一番最初に問い合わせをした浜崎海運に同じ出身地の先輩(関甲板手/2021年中途入社)が居たこともあって入社を決めました。

―先輩がいることはどの段階で知ったの?

会社に電話した時に船員課の岩永さんに出身を尋ねられて、その時に天草出身の先輩がいることを教えてもらいました。

写真:佐々木が話している様子

―関君とは高校(天草拓心高校)も同じだったんだよね。

はい、僕が1年生の時に関さんが3年生で。
当時は特に接点はなかったんですが、僕の通った科は少人数制だったこともあって、同じ科の先輩として関さんの存在は知っていました。後で聞いたら関さんも僕のことは知っていたそうです。

―じゃあ先輩もいるしもうここでいいや、って感じでうちに決めちゃったの?

いえいえ(笑) 岩永さんにも「先輩にも一度話を聞いてみるといいよ」って言われたので、先輩に連絡をとって会社についての話を詳しく聞いて、そして決めた感じですね。「とにかく人間関係がいい」って言われたのが決め手でした。

―彼(関甲板手)自身が人間関係で苦労したみたいで、転職3社目でうちに来ているから、言葉に説得力があるよね。

はい。僕は人間関係や職場の雰囲気がいい会社に行きたいってことを一番重視していたので。
他の利点を重視して入社しても、人間関係がうまく行かなければ結局その会社を辞めてしまうんじゃないかと思ったんですよね。

写真:横手が話している様子

僕の場合は、海技短大2年生の就職活動期がちょうどコロナ禍の最初の年に重なってしまいました…。学校側も授業や就職の指導をどうすればいいのか全然分からない時期だったと思いますが、僕も自宅待機になって登校すら出来ず求人票も見ることが出来ないような状態でした。

そこで母校の水産高校でお世話になった先生に相談したんです。
最初に「どんな船に乗りたいの?」って訊かれて、タンカー船に乗りたいってことは既に決めていたので、まずは内航タンカーの会社を数社教えて頂いて。「給料を重視するなら一番給料が高い会社を紹介するよ」とも言って頂いたんですが、「給料の高さより、先生がこの中で一番人当たりがいいと思う会社を教えてください。最低5年は勤続できそうな会社に行きたいです。」って言ったんです。そして紹介していただいたのが浜崎海運でした。

先生自身が元船員で色々な船会社に勤めた経験がある方なので、実経験のある人に言われると説得力が違いました。

―関君が転職してうちに来たのが、横手君の入社する約半年前のことで、横手君の入社の1年後に佐々木君が入社して来たんだよね。

コロナの影響で在学中は別学年の生徒と一緒になることが殆どなくて、同級生以外は全然知り合いがいない、顔も見たことがないし名前も知らない、って状態でした。なので佐々木君のことを知ったのは「今度新卒で波方出身の子が入社してくる」と聞いた時が最初でしたね。

横手さんと同じ船に乗船して実際に顔をあわせることができたのは、僕の2回目の乗船の時でした。

―同じ学校出身の先輩がいるとやっぱり心強い?

そうですね。

写真:3人が話している様子

―ところで横手君は何で専攻科のある三崎(神奈川県立海洋科学高等学校)から波方海技短大に進んだの?

それは…高校の或る先生に「専攻科に来るな」って言われたからです(笑) でも今思えば行かなくて正解でした。

高校1年の夏にデッキ(甲板部)かエンジン(機関部)かを決めなきゃいけなかったんですけど、その時はどっちが好きなのか自分でも分からなくて、適当な感じでデッキに決めちゃったんですね。そのまま同じ高校の専攻科に進む場合には、デッキにしか進めないんです。

でもデッキに決めたあとでエンジンがやりたいなと思うようになって。元々機械をばらしたりすることも結構好きだったんです。波方に行ったことで、デッキかエンジンかを再選択できる機会ができて、今こうやってエンジンで就職できたし結果的にすごくよかったと思います。

―海技学校で学んで役に立っていることや、海技学校の時にしっかりやっておいてよかったなって思うことはどんなことかな?

学校でやる実技全般は、頭にさえ入っていれば実際に船で働く時に対応しやすいと思います。デッキの場合は、特にロープワークは毎日やることなので必須ですね。海図の取扱いも基本なので覚えておいた方がいいと思います。

それからデッキ・エンジン 関係なく工具の名前は覚えておいた方がいいです。例えば現場で「〇〇を持ってきて!」って言われた時にすぐに対応できるので。

工具の名前と使い方だけでも頭に入っておくと「この作業をやるときにはこの工具が必要だな」って分かるのでいいね。

写真:佐々木が話している様子

あとは、学校を出て就職先で乗る船の種類や、その船にある設備や機械でそれぞれ変わってくることが多いので、個々の機械の操作方法などは実際に働き出してやりながら覚えていけばいいと思います。

タンカーはすごく特殊な船なので、学生時代に乗った練習船(帆船 海王丸)とは全然違っていて、本当に乗ってみないとわからないことだらけでした。デッキの場合は、特に荷役に関しては入社して仕事をするまで全く分からなかったです。

エンジンの場合も、練習船と実際に働き出して乗る船とでは設備も機械も全然違うと思います。タンカーに乗って初めて見た機械も多かったです。

練習船でやってよかったことは「何でも手動でやる」経験が出来たことかな。浜崎海運の船の場合、機関もほぼ自動なのでボタンをピッと押せばそれでOKですけど、何事も一つづつ手作業でやるのは練習船ならではの良さかもしれません。手動操作の経験があれば、万が一自動設備が壊れた時でも構造や原理がわかっているので対応が出来ますよね。

―練習船は設備や作業のやり方が古典的な部分もあるけど、それなりに学ぶ理由もあるってことだね。

写真:横手、佐々木が話を聴いている様子

―先輩・後輩として、2人はお互いのことをどう思っているの?

横手さんは年の差を感じることなく友達感覚で話せる先輩なので、すごく関わりやすいな、と思っています。

いい後輩だ!(笑) 佐々木君は…言葉で表現するのは難しいんですけど、一緒に居ると何だかいいなって思う、接しやすい存在です。

写真:佐々木、横手が話している様子

―関君は2人からみてどんな先輩なの?

関さんも変に気を使わなくていい先輩ですよね。

うん、話しやすい先輩です。

―先輩・後輩の接しやすさって、それぞれの会社の雰囲気でも違ってくるのかな…?

自分の知り合いの会社では入社が1年違うだけでも上下関係がすごく厳しいところもあるってたまに聞きますけど、浜崎海運ではそういうことはあまりないですね。

もちろん仕事中は上下関係の中で先輩にきちんと対応しますが、例えば仮バースで年の近い先輩達と一緒に出かける時には、距離がぐんと縮まる感じです。流石に機関長クラスに接する際には勇気が要りますけど…

―確かに機関長には最初は話しかけ辛いかな?でも、一緒に乗船した機関長は、横手君の仕事への姿勢を積極的だと評価していたよ!何か意識したことはあったの?

分からないことは、正直に「分からないから教えて下さい」と自分から声を掛けていきました。どの機関長でも仕事に関しては尋ねればきちんと教えてもらえるし、結構早い時期から機械もたくさん触らせてもらえて溶接など色々なことも経験させてもらえました。「実際にやってみないとわからないだろう」って。

―機関部の場合は特に、実際に機械に触ることって大事だからね。

写真:3人が話している様子

―正直、これまでで仕事を辞めたくなったことはある?

辞めたくなった、というか挫折した時は2回あります。

1回目は入社してすぐの頃ですね。仕事内容が全然わからなくて、でも周りの先輩たちも忙しいから付きっきりで教えてもらえることなんて滅多になくて。分からない、だけど仕事はしなければいけないって感じで、一番最初の乗船時はこれで挫折しました。そして体調も崩して下船しちゃったんですよね…

―ああ、その時のことは覚えている、実はあの時「もしかしたら佐々木君はこのまま辞めちゃうのかな」って思っていた。

ある程度仕事の基礎を覚えるまではすごくきつかったです、でも「辞めたい」って気持ちは全然なかったんですよね。

辞めたくなったのは、周囲の同職種の友達の話を聞いた時ですね。それが2回目です。待遇を自分と比べてしまったり、休暇や仮バースが自分の乗っている船と比べて多い時とか。忙しいときに友達から「こっちはまた仮バースだよ」みたいな話を聞くと…

でも忙しい時もあるのは仕方ないって、最近は割り切れるようになったので克服出来ました。

写真:横手が話している様子

辞表を書くほど深刻に辞めたくなったことはないんですけど、人間関係で悩んだことはあります。或る乗船時に「この人間関係がずっと続くならつらいな」って思った時は正直ありましたね。

だけど何処に行っても気が合う人と合わない人は必ずいますよね。なのでここを辞めて次の会社に行っても同じことの繰り返しなのかなぁと。だからもう割り切って、次の乗船を楽しみにすればいいかって思うようにしました。

あとは、佐々木君と同じように、友達の話を聞いた時に自分と色々比べてしまって気持ちが揺らいだことはありました。

その時は友達の会社が羨ましかったですけど、今こっちの会社のほうが待遇がいいからこの会社に行こうとか、その時々だけで即断できることじゃないんですよね。それに新しい会社に行くとそこでまた一から人間関係をつくらないといけないし、それがすごくつらいかな…

仕事もまた一から覚えなきゃいけないし。

確かに、人間関係を築くことって結構大変なんだよね。周囲が受け入れてくれることもすごく大事なんだけど、自分がそこに溶け込もうとか、仕事を頑張って覚えようっていうのは、それに関する自分の努力があるわけだよね。

写真:浜崎が話している様子

浜崎海運の船内の人間関係が良いって言ってもそれだけじゃ駄目で、君たちが自分からそこに入っていって溶け込む努力をしてきたからこそいい人間関係を築くことが出来たし、そしてその人間関係があるから辞めたくなる思いも乗り越えて、仕事を続けている今があるんじゃないかな。

真剣に、一生懸命にやっているからこそ、人間関係で悩むんだって思う。自分自身が悩んで努力をして、そうやって手に入れた人間関係なんだから、簡単に捨てたりまた一からやり直したくはないんだよね。

―コロナ禍を経て、これから就職活動を始める学生にとって参考になるような経験談があれば聞きたいんだけど、2人は就職活動でどんなことが大変だった?

会社を探す際に自分でもネットで調べたりしたんですけど、例えばタンカーの会社で検索をかけると検索結果の数だけはたくさん出てくるんですよね。でも多すぎて何を基準に会社を選べばいいかがわからなくて困りました。

僕の場合は母校の信頼できる先生という頼れる存在があったから、アドバイスを貰えてすごく助かったと思います。学校の先生、あとは就職や業界に詳しい人に話を聞くのが一番いいかなぁ…

写真:横手が話している様子

僕も実際に色々な経験をしている先輩の話が一番参考になりました。

―自分から進んで先輩の話を聞きに行ったり、母校や先生など、頼れる場所や人には積極的に頼ってみることは大事だね。

もしも、そういう話を聞ける人がいない、頼れる場所も何も思い浮かばないって場合には、もう浜崎海運に連絡してもらうと…

―困ったら最後は「浜崎海運の岩永までご連絡ください」ってことで(笑)
この座談会の記事を読んで問い合わせをしてくれるのも何かの縁だからね。

―船で仕事をする上で、必要な技能やスキルって何だろう?

一番大事なのはコミュニケーション能力ですかね。

“コミュニケーション能力”って改まって言うと何だか難しいんですけど…

写真:浜崎の話を聴く横手と佐々木

ああ、“コミュニケーション能力が高い”っていうのは、単に話が上手いとか饒舌だとか、そういうものだけではないよね。船内での一番簡単なコミュニケーションってことで言えば、なるべく一緒にいる時間を増やすっていうのがあるのかなって思う。

例えば、船の上で朝起きて、食堂でぼんやりTVを見ながらご飯を食べている時、全然会話はしていなくても「ああ、今日も佐々木がいるな」「横手先輩がいるな」って、言葉だけじゃなくて、その存在自体、五感でも多分コミュニケーションって取っているはずなんだよね。そうやって人と一緒に過ごすだけでも連帯感って生まれてくるから、あまり難しく考えなくてもいいのかもしれないね。

あとは人として基本的なことで「嘘をつかない」「挨拶をする」。船ってチームで仕事するから、互いを信頼するためにもこれは大事だね。

ところでこれ、僕が『大事なことは「嘘をつかない」「挨拶をする」、これだけ覚えておいてくれたらいいよ』って、入社するときに話していることなんだけど、みんな忘れて全然覚えていないよね!

…覚えていないです(笑)

(笑)

写真:笑顔の横手と佐々木

―浜崎海運へ就職を考える後輩たちへ向けて、佐々木君からメッセージやアドバイスをお願いします!

やってみないと分からないことや、失敗しないと分からないこと、覚えられないことが多いはずなんで、色々経験して失敗してほしいなと思います。自分自身も失敗して覚えてきたことがたくさんあるので。

そして失敗してしまった時は、上司や先輩に正直に言うことですよね。正直に言えば「これはこうすればできるよ」って教えてもらえるし、失敗したこと自体に対してあとで何度も責められることもないので…

写真:横手、佐々木が話している様子

僕は1回目の乗船の時にバルブを折ったことがあります! で、すぐに機関長に謝りに行ったんですが「ドックで交換すればいいよ」って言ってもらえたのでホッとしました。折れた箇所は応急処置で凌げたのと船がドックに入る直前だったから本当によかったです!(笑)

(笑)バルブはそんなに簡単には折れないですよ。とにかく失敗を恐れずチャレンジしてほしいです。

―(笑)横手君はどんな後輩が来てくれたら嬉しい?

波方出身の後輩が来てくれたらもちろんすごく嬉しいです、同じ学校だと在学中にどういった事を勉強しているかが自分も把握できているので、実務も教えやすいというのはあります。

でも海技学校、水産高校、船員養成以外の学校など、出身に関わらず、何か分からないことがあったら「ここが分からないです」ってどんどん聞いてくれる後輩だと嬉しいです。分からないことがあっても黙ったままだと僕も気づけないし、どう分からないのかを伝えてくれないと僕も教えることが出来ないです。それに分からないまま放置していると、仕事の現場で危険を伴うこともあるので。消極的になるよりもぐいぐい来てくれるくらいがいいですね。

―「失敗を恐れずやってみる」「先輩にどんどん聞く」何でも自分から積極的に動くってことが大事だね。
今日の話も参考に、会社としても新人船員がより一層仕事を覚えやすくできるような取り組みを今後検討していこうと思います。

―2人と話せて楽しかったです、ありがとうございました!

写真:3人が話している様子